工業大国となった日本は,貿易黒字の改善から国外から安価な農作物を輸入するようになりました.その結果食糧自給率は年々減少し,カロリーベースで4割程度と先進国の中では最も低い水準となっています.農林水産省では食糧自給率をカロリーベースで5割以上国内で賄うことを目指しています.カロリーベースとは食物や飼料に含まれるカロリーをもとに計算したもので世界規格となっています.これに対して,以前使われている重量ベースは食料の重さを計算したものです.カロリーベースではカロリーの低い野菜は含まれにくいので重量ベースや金額ベースを基にした総合食糧自給率で計算する方法もあります.
日本では平野が少ないため耕作地が少ないので,日本の農業は外国の安価な農作物に十分競争に耐えられませんでした.その上,食事の欧米化に伴い,食料の輸入が増え,食料自給率は減少し続けています.
食糧自給率が低いとどのような問題があるのでしょうか?地球温暖化と異常気象に伴い農作物の収穫量が減少してきています.加えて爆発的な人口増加により,数年後には食糧は不足すると言われています.世界の食糧が不足すると,食料を輸入に頼っている日本はたちまち飢餓国になるおそれがあります.残念ながら農林水産省の「食料・農業・農村基本計画」(平成12年3月)では食糧不足に関する対策が講じられておらず,深刻な食糧不足が危惧されます.食料は不足したらすぐに生産することができるものではありません.長い期間をかけていかなる非常事態が起こっても食糧が不足しない状態にしておくことが求められています.
自給率の高いアメリカでは食糧危機に楽観的な見通しを立てています.その理由は,食糧危機に直面してもアメリカ国内の食糧は供給できる状況であり,余った食料は他国に高額で売ることができるからです.これは,市場メカニズムにおけるパレート最適な状態を一見実現しているようにみえますが,真の意味で社会的に望ましい状態ではありません.農業という生産活動においては次のような問題を含んでいます.
もともと食料生産にハンディがある国々を巻き込んですべてを市場競争で賄うのは公平性の観点からも認められるものではなく,輸入制限など国内の農業振興を推進していかなければなりません.
農作物の遺伝子の一部を組み替えることで,害虫や雑草,疫病に強い農作物を作り,収穫率を上げる技術が開発され,日本でも安全性が認められ大豆など輸入されています.
現在のところ遺伝子組み換えの農作物の人体,環境への影響は報告されていません.しかしながら,遺伝子は生物の設計図の部分にあたり生物は長い年月をかけて進化を遂げてきました.その遺伝子組み換え農作物の安全性の確認はたかだか十数年しかみておらず,長い目で見たとき人体や環境に影響を及ぼすとわかった場合,取り返しのつかないことになりかねません.また,遺伝子組み換え農作物を制作中に誤って人体に害のある農作物を作ってしまうことも否定できません.さらに,その農作物が外部に漏れてしまうと深刻なダメージを与えることも予想され,もはやSF映画の世界ですまされる話ではなくなってきているのが現状です.
遺伝子組み換え農作物が普及している大きな要因は,今後起こりうる世界規模での食糧危機に対応するためです.やせた土地で農薬もいらない農作物を生産すれば,安価なコストで大量に農作物を生産することができ,食糧危機を回避することができます.