経済学とは

尺度としての経済学

今日,日本では,失業・年金・医療といった社会福祉問題,治安の悪化,モラルの欠如など多くの問題を抱えています.さらに世界に目を向けると,食糧問題,貧困問題,環境問題など,数多くの問題が存在します.私たちは,このような問題にどのように取り組んでいけばよいのでしょうか?また,経済学はこのような問題に対してどのような解決策を与えてくれるのでしょうか?

経済学とは,尺度(簡単にいえば,ものさし)を使って物事を分析する学問です.より具体的にいえば,経済学は,人々がどの程度幸せなのかをものさしを使って測ることで,人々にとってより望ましい行動や社会の制度を比較することができるようになります.行動や制度が比較できるならば,よりよい行動や制度的枠組みを探ることができます.

欲求と制約

経済は私たちの普段の生活そのものです.たとえば,「ステーキを食べたいがお金がないため諦めた」という事例は経済です.具体的には次のように分類することができます.

欲求・欲望
食べる,寝る,遊ぶ
制約
お金がない,時間がない,モノがない
選択
限られた制約の下で,自分の欲求や欲望を満たすようなものを選択する.

私たちの欲求は際限がありません.つまり,無限に存在します.しかし,お金や時間,石油などの天然資源は有限です.無限の欲求に対して有限の資源をいかに有効に利用するかが経済学の根本の問題です.

私たちは限られた資源や時間(このことを希少性(稀少性)という)の中でさまざまな選択を行います.希少な資源をより効率的に利用できる方法に選択を変更すれば,私たちはより豊かな生活を過ごすことができるでしょう.

経済問題

限りある資源を有効に利用するための問題を経済問題といいます.経済問題はの4つ基本問題として分類することができます.

  1. 資源配分問題(何をどれだけ生産するか)
  2. 技術選択問題(それを生産するためにどのような技術を選択するか)
  3. 分配問題(それを誰に分配するのか)
  4. 社会的意思決定問題(誰がどのような過程を経て意思決定を行うのか)

1. 資源配分問題

資源は限られたものです.ここでいう資源とは,単に石油などの天然資源だけでなく,時間やお金なども含みます.どんなにお金持ちの人も1日24時間しかありません.資源は有限なので,たくさん資源を使うと資源は枯渇してしまいます.しかし,資源を使わなければ,経済活動を行うことができません.資源をどれだけ使うのかというのは重要な問題です.

2. 技術選択問題

同じ生産物を同じ量だけ生産するときに,より多くの材料や時間を使ったり汚染物質を排出するのは非常に問題があります.より少ない資源で生産物を生産する技術があるならばその技術を選択した方がよいでしょう.その一方で,その技術を選択すると多くの費用が必要なこともあります.費用と技術選択に伴う効果との比較が必要になります.

3. 配分問題

作られた生産物は,私たちの手元に届きますが,高所得を得ている人は生産物を容易く得ることができますが,低所得しか得ていない人は生産物を容易に得ることができません.この意味で分配問題を所得分配問題ともいいます.また,経済的決定を自由市場経済に委ねている社会では,不平等な所得分配が生み出されます.この所得格差は,個人の力では解消することができません.これを再分配問題といいます.

4. 社会的意思決定問題

計画経済では,モノの価格や生産量などのすべての経済の意思決定は政府が決定します.この体制の下では,人々に不平等が生じにくい一方,あまりにも莫大な情報を政府が把握しきれないために計画通り実行されにくい弱点があります.

自由(市場)経済では,モノの価格や生産量などは市場と呼ばれる目に見えない場で莫大な情報量を処理しつつ効率的に決定されます.この体制の下では,モノは過不足なく生産される一方,所得分配問題に直面します.また,道路や法律といったものは費用負担が難しいために市場を通じて供給されません.

以上のようなことから,多くの国々では,自由市場経済を主としつつ,市場では供給されないようなモノやサービスを政府が行っています.このような体制を混合経済といいます.

科学としての経済学

経済学は社会科学として位置づけられています.科学とは,原因と結果の関係を明らかにするものです.自然科学でも原因と結果の関係が不明瞭なことも多い,あるいは,いろんな条件がそろわなければならないのと同じように,経済学でも,いろいろな条件が揃わないと望ましい状態を達成できなかったり,原因と結果の関係が不明瞭であったり複雑であったりするために,天気予報が外れるのと同じように経済予測が困難なこともあります.